名城大学外国語学部?藤原ゼミ（英語教育）では、語学力の向上や異文化理解だけでなく、教育実践を通じてグローバル社会における「共生」のあり方を探る授業が行われています。ゼミの中心的な目的は2つあります。1つ目は、日本語教育を実践する中で、日本社会が今後直面する「外国人との共生」に対する理解を深めること。2つ目は、主体的な調査?討論?発表を通じて、言語教育に関する専門知識とスキルを習得することです。

　こうした背景のもと、2022年度から始まったのが「日本語交流プロジェクト」。藤原先生が大学院時代に外国人児童?生徒の学習支援に携わった経験から着想を得ており、「日本語を教える」という行為を通じて、学生たちは第二言語としての英語教育にも自らを相対化して学び直すきっかけを得ています。

スリランカLNBTIとのオンライン交流プログラム

2025年5月、藤原ゼミの学生たちは、スリランカにあるLNBTI（Lanka Nippon Biztech Institute）の学生たちと2回にわたるオンライン交流を実施しました。LNBTIの参加者は日本語能力試験N3相当の学習者30名、名城大学からは7名が参加し、1グループに日本側1人、スリランカ側3～5人という構成で固定されたグループに分かれました。

第1回（5月21日）：自己紹介から始まる交流

最初のセッションでは、大学紹介の後、互いに自己紹介を行いました。出身地や趣味、好きな食べ物などを話題にしながら、お互いの文化に触れる時間となりました。スリランカ側の学生たちは積極的に質問をし、日本語を使った会話に意欲的に取り組んでいました。最後には、各グループが話し合いの内容を全体に向けて報告し、学びを共有しました。

第2回（5月28日）：時事問題をテーマにディスカッション

続く第2回では、「政治と経済」をテーマにした意見交換が行われました。LNBTIの学生はスリランカの経済や政治情勢を紹介し、名城大学の学生たちは日本の政治状況や物価上昇といった話題を発表しました。ブレイクアウトルームでの議論では、難しい語彙や表現にも互いに挑戦しながら、相互理解を深めました。

「やさしい日本語」と「教えること」の難しさと喜び

参加した名城大学の学生たちは、言葉の壁を越えて伝えることの難しさと、通じた時の喜びを実感したと語っています。

「初めて“教える立場”で交流をしたため、少し緊張もありました。ですが、相手に合わせて言葉を選び、ゆっくり話すことで、どんどんリアクションもよくなっていきました。相手の学生たちが『ちょっと待ってね』と返してくれるようになったとき、心が通じた感じがして嬉しかったです」（3年生）

「普段、私たちは日本語を無意識に使っていますが、今回は一言ひとことに注意しないと伝わらない。その経験から、自分が英語で話すときも、相手は努力して理解しようとしてくれていると思うようになりました」（3年生）

「ディスカッションで『あなたは政治についてどう思うか』と聞かれ、うまく答えられなかったことが印象に残っています。自分がどれだけ無関心だったかに気づき、これを機にもっと考えていきたいと思いました」（3年生）

未来へ続く架け橋として

この交流は、単なる語学練習にとどまらず、「教える側としての経験」や「異文化との対話」、「共に生きる力」の育成にもつながっています。学生たちは、「やさしい日本語」や「分かりやすい伝え方」について深く考えるとともに、相手の努力を感じ、自分自身も学び直す貴重な体験を得ました。

今後もこのような国際交流が継続され、若い世代が言語や文化の違いを越えて、共に学び、成長していく姿が期待されます。